【体験談】蟲憑きの部屋 ── 夜ごと囁かれた「かわりに」

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今日は、俺が実際に体験した“忘れられない部屋”の話を書こうと思う。

心霊現象とか怪談って、人によっては「どうせ作り話だろ」って思うかもしれない。俺も普段はそういうタイプだった。ホラー映画とかは観ても楽しめる方だし、いわゆる怪談本とかもエンタメとして読む感じで、本気で信じたことはなかったんだ。

でも、このアパートでの出来事だけは違う。

今もあの夜のことを思い出すと、背筋が冷えて眠れなくなる。

家賃の安さに惹かれて

当時、俺は転職したばかりでお金に余裕がなかった。できるだけ安い部屋に引っ越したくて、不動産サイトを眺めていたら、やけに安い2Kの物件を見つけた。

築40年以上の古い木造アパート。外壁は黒ずんでて、通路の床板もギシギシと音を立てる。でも内見したときは「まあ古いけど住めないことはないな」くらいの印象だった。

畳も新しくはなかったけど、掃除されていて清潔そうに見えたし、何より家賃が安い。俺は迷わずそこに決めた。

部屋は2Kで、片方はフローリング、もう片方は和室。その和室を寝室にすることにしたんだけど、最初から一つだけ気になる点があった。

押し入れの戸が内側から釘で打ち付けられていたのだ。

内見のときは「古いから壊れてるのかな?」としか思わなかったけど、よく考えれば妙なことだ。だって、普通は外側からしか釘は打てないはずなのに、どう見ても“中から”閉じ込めたみたいになっていた。

不動産屋に聞いたら「前の住人が勝手にやったんじゃないですか?」と軽く言われただけで、俺も深く追及せずに契約してしまった。

不思議な音

引っ越して3日目の夜。

布団に入ってウトウトしていたら、耳元で「カリ、カリ……」と音がした。畳を小さな爪でひっかいているような音だった。

ハッとして起き上がったけど、部屋は静まり返っている。窓も閉めているし、外からの音でもない。最初は気のせいだと思ってまた布団に潜り込んだ。

でも、その音は次の夜も、そのまた次の夜も聞こえた。

それどころか、日を追うごとに音は押し入れの方から聞こえるようになっていった。

「ガサ……ガサ……」

まるで、中に何かが這い回っているような音。

でも押し入れは釘で完全に塞がれていて、虫やネズミが入り込む隙間なんてなかった。

それから俺は夜が怖くなった。布団に入っても耳を澄ませてしまい、眠れない。気づけば時計の針が3時を指していることも何度もあった。

押し入れを開けてしまった

一週間くらい経った頃、俺はついに我慢できなくなった。

「中を見ないと落ち着いて眠れない」

そう思い、金槌と工具を持って釘を一本ずつ外していった。古い木の破片が落ち、湿ったような空気が押し出される。

最後の釘を外し、戸を横に引いた瞬間、鼻を突く強烈な臭いが部屋いっぱいに広がった。

中には、木箱が一つだけ置かれていた。

布でぐるぐる巻きにされ、縄で強く結ばれている。布には黒い染みが広がっていて、触るだけでもためらうような不気味さがあった。

普通なら絶対に触りたくないはずなのに、俺はなぜか目を逸らせなかった。

「開けなきゃいけない」

そんな妙な衝動に駆られて、縄を切り、布を剥がした。

蓋は内側から何度も爪でひっかいたように傷だらけだった。

震える手で蓋を持ち上げると――

中には、小さな赤ん坊の形をした黒ずんだ塊が、いくつもいくつも押し込められていた。

悪夢の日々

その夜から、俺は毎晩のように夢を見るようになった。

夢の中で押し入れの前に立つと、畳の隙間から小さな手が無数に伸びてきて、爪で畳を「カリ、カリ……」とひっかく。

「かえして……」

「でたい……」

かすれた声が重なり合って耳に響き、布団をかぶっても消えなかった。

やがて夢は現実と混ざり合うようになった。

起きているときでも、畳の隙間から指が見えたり、寝返りを打ったときに冷たい手が腕を掴んだりする。

眠れない日が続き、体も心も限界に近づいていた。

天井いっぱいの影

二週間目の夜。

金縛りにあい、体を動かせないまま目を開けた俺は、絶望した。

天井いっぱいに、干からびた赤ん坊のようなものが何十匹も貼りついていたのだ。

全員が爪で「カリ、カリ……」と音を立てながら、首だけを俺の方へ向けていた。

「でたい……」

「かわりに……」

耳の奥に直接響くような声。

その瞬間、俺は気を失った。

逃げ出した後

翌朝、目を覚ますと部屋は静まり返っていた。

ただ、畳には小さな爪痕が無数に残っていた。夢でも幻覚でもなく、確かに“そこにいた”としか思えなかった。

俺は荷物をまとめ、その日のうちに部屋を飛び出した。管理会社には何も言わなかったし、二度とあのアパートには近づいていない。

後から調べてわかったことがある。

その部屋には昔、若い母親が住んでいて、産まれた子どもを次々と亡くしていたらしい。母親は「蟲が憑いた」と言いながら錯乱し、最後には姿を消した。その後、押し入れが釘で打ち付けられたのだという。

今も残る声

引っ越して数年経った今でも、夜ふと目を閉じると耳元であの声がよみがえる。

「かわりに……」

あれが現実だったのか幻覚だったのかはもう分からない。

でも、俺にとっては確かに体験した“事実”なんだ。

👉 もしこの記事を夜に読んでるなら、ちょっと耳を澄ませてみてほしい。

もしかしたら君の部屋のどこかからも「カリ、カリ……」って音が聞こえてくるかもしれない。

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